鬼にも負けないくらいの魑魅(ちみ)魍魎(もうりょう)。
そう呼ばれる者は金国を守る大将軍でありながら皇子であった。
和親の証で敵国に贈られた皇子、彼は噂の中の遠慮ない表現とは違った。

白い肌、黒檀のような髪の毛、異国的で高雅な長袍、彼は美しかった。
西の敵国に捕虜と同じように引きずられてきたため、寂しく見えるのか。
帝国の公爵、イライザはそう思っていた。但し、何日かだけ。

イライザが受けた第一印象のか弱い姿は跡形もなく、
皇子のドゥギョムは脱出した後、賭場をさらい始めた。

もちろんドゥギョムにも言い分はあった。
彼はこれが9回目の人生であり、今回が最後かも知れないという何となくの
確信もあった。
ある時は誰かの体に憑依したが、今回は赤ん坊に転生したのだ。
だから、この最後の人生は楽しく天寿を全うしようと決心した。
他人から自分勝手だと言われようが気にしない。
しかも、運が良かった。
広い肩と寛大なお心遣い、優しい性格まで備えている完璧な人を見つけたから。
彼が西国の公爵であることはあまり問題ではない。
9回目の人生、やっと一生を共にしたい人が現れたことが問題である。

“はぁ,今すぐ君を押し倒したい気持ちなんだ”