老若男女を惑わす魔性のせいで侍従を一人も置くことができない不運な公爵、カヘル・ルアブ。
ひょんなことから魔性が通じない不思議な体質を持つメイドのレナに出会う。

彼から広がる魔性が香りだったら、今この部屋はめまいがするほど濃い香りに満ちているはず。
しかし、レナの目には心配と恐怖だけ、その他にいかなる感情も垣間見られなかった。

“ど、どうか助けてください…”

かろうじて涙をこらえていたレナが涙をぽたぽた流しながら再び助けてくださいと祈り始めた。
彼の微笑についた「神々も惚れる」という修飾が色あせる瞬間だった。

“普通じゃない。 やっぱり疑わしい”